村長Column

デザイナー交代で原点を見直す

ちょっと前にイッセイミヤケのデザイン・ディレクターの滝沢直己さんが2007年春夏シーズンで退任し、デザインチームが後を引き継ぐことになりました。
その他にもここ数年、グッチがアレッサンドラ・ファッキネッティからフリーダ・ジャンニーニにデザイナーを変えたり、エルメスがマルタン・マルジェラからジャンポール・ゴルチエに代わったり、セリーヌはマイケル・コースとの7年にわたるデザイナー契約の後、ロベルト・メニケッティ、イヴァナ・オマジックとデザイナーを交代しています。

デザイナー交代はグッチを盛り上げたトムフォードのように上手くいく場合もあるし、セリーヌのメニケッティのようにすぐに代えられてしまう場合もあります。

しかし、デザイナー交代というと、普通は新デザイナーの個性で勝負するような印象なのですが、代わった新デザイナーは、ブランドの過去のデザイン資産を見直し、そのブランドらしさを再定義して、しっかり打ち出すことを試みるので、かえってブランドの個性が際立ったりします。

さらにその上に、現代性とかデザイナーの個性が加わることで、マーケットに適したものになるでしょう。

というように、デザイナー交代は、単に商品に新鮮さを出すという以上に、ブランドの原点に立ち返り、ブランド価値を見直し、時代に即したブランドとはどのようなものか、を考える機会になるということです。


企業でもずっと同じ経営者だと、自社の在り方に慣れてしまって、自社の強み、弱みとか特長が本人にはわからなくなってしまうことがあるようです。
ですから自社の本当の強みというのを理解しないままに、自社商品を売り込んでいるということもあるのです。

そのようなときには、やはり外から自社を見直してもらうことが必要なのかもしれません。「私の会社の良いところはどこだと思うか?」ということを再確認するのです。

ここで注意すべきなのは、社員に対して「今の会社はどう思うか」などとうかつに聞かないことです。
会社の価値を見直そうと思って、コンサルタントを雇って社員のヒアリングを行うと、十中八九は会社への不満が噴出します。

よほど良い会社で無い場合は、通常6割以上は不満を持っているものです。
そうすると、会社のいい所を聞く前に、悪いところばかりがでてきて、それが会社の経営批判に繋がってしまいます。
経営者は自分の無能を社員に指摘されたと怒り、やる気を無くします。
そして険悪な雰囲気になってしまいます。

逆に社員は、聞かれたので不満を伝えたのに、全然改善されないので、会社への不信感を募らせてしまいます。

では、どうしたら良いかというと、デザイナーが交代する時期のように、トップが代わる時期に、後任の経営者やリーダーが社員の声を聞けばいいのです。
本来人材の配置換えって、組織を見直すチャンスなのです。

前任者の経営による不満は、後任者の責任ではありませんから、素直に組織や商品の改善点として聞くことができるのです。

そうすると、デザイナー交代というのは、さらに組織を見直すきっかけにもなっているということです。

会社組織ではなく創業期のデザイナーの場合はどうかといえば、まだしっかりとした個性が固まっていない時期だと思いますから、顧客の声を聞くことが効果的だと思います。

以前も紹介した方法ですが「この商品のどこが気に入りましたか」「このブランドらしい商品ってどれだと思いますか」とか反応を確かめながら質問していくとよいでしょう。

もちろん、多くのデザイナーは、展示会に出展してバイヤーの声を聞いて、このあたりは当然クリアーしていると思いますが、そうすると、自分の狙いとお客様が感じる自分のブランドのイメージが違っている、なんていうことにも気が付くと思います。

いろいろな人の意見から、自分のブランドの輪郭をイメージし、その中で特長を見つけていくのです。ただし、この場合は、お客様やバイヤーの声にあまり振り回されてはいけません。

お客様の声は参考にとどめながら、自社ブランドの良いところやを見直すのです。
初心にかえって「私はこのブランドで何をしたかったんだろう」「どうしてブランドを立ち上げたかったのだろう」と見つめなおすのも良いかもしれません。


さて、9月から台東区の若手経営者・後継者セミナーが開催されます。デザイナー交代の話は出てこないとは思いますが、企業の経営を継ぐことになった新社長や、スタッフが増え始めた創業期のブランド、等多くの方に聞いてもらいたい内容です。

それから私は勉強する意欲を持った人、向上心を持って何でも貪欲に吸収しようという人が成長すると思っています。そういう人にデザビレ第2期には入居してほしいと思います。